2011年9月28日水曜日

「時間を縮めてみています」動画専用カメラ・レコロを分解してみた

キングジムから発売された「時間を縮めてみています」(time lapseといいます)動画専用カメラのレコロ[Amazonアソシエイト]をさっそく分解してみました.すでに「レコロ 分解: Gスタの更新しない日記α」で分解記事が出ていますが,いちおうエンジニアの末席を汚すものとして基板上の部品の解説もしてみましょう.

裏面のいかにも怪しいネジの目隠しゴムを,精密マイナスドライバーで掘り起こします.
前側にも電池カバーを外したところにネジが二つありますが,写真省略.
この隙間に精密マイナスドライバーを差し込んで二つに割ります.
カメラおよび画像処理基板.右の正方形の半導体はマイコン.左のESMTの刻印が見えるものはSDRAMです.

マイコンの型番はGeneralplusという会社のGPL32100Aというモノで,ググったら中国メーカーの製品のようです.動作電圧2.7~3.6V(ニッケル水素充電池だと安定動作するか微妙),32bit ARM7コア,RAMは16KB,最大96MHzで動作し,液晶コントローラ(まさに液晶付きです),MotionJPEGの処理機能付きということで,まさにこの製品にぴったり.
日本の電気技術者で聞いたこと人がある人は多くないでしょう(私もないです).このチップを採用するということ自体,中国メーカーにODM(デザイン委託)したことが強く連想されます.右上の金属の円柱が水晶振動子です.SDRAMの容量は64Mbit(8MB)です.


マイコン基板裏面.黒いのがCMOSカメラ本体,そしてSDカードスロット.“CMOS BOARD”の文字が.
下の黒いソケットがACアダプタからの電源,赤と黒の線が電池から.黒い樹脂のあるところ,マイコンが置けそうな基板パターンになっていますが…….
今回はもう片方の基板にマイコンが載りますから,おそらくマイコンと液晶表示器を組み合わせたリファレンス基板のデザインを流用した名残なのではないかと思います.基板右下あたりがDC-DCの電圧安定回路のようです.


CMOSカメラ用の穴,中央に位置していないのがおわかりでしょうか.

三脚用ねじ穴.中に入っているのは普通のナットと金属板です.低コストで必要十分な機構設計.

設定を表示するための液晶表示器.右下に電極があります.これを――

――スイッチからの入力を与えるフレキシブルケーブルと,押さえることで接触させています.半田付けや,嵌合ソケットなし!
よく見ると分かると思いますが,小さな穴が二つあって位置決めがぴったりできるようになっています.これでズレがないようになっています.低コストを考えてるなあ.故障するとしたら,ここからだと思います.

光学ファインダー,これも両面から挟み込む形で固定されていて,かんたんに取れます.
いかがでしたでしょうか.ざっと見たところ,製造原価は部品,実装,組み立てを含めても1500円ぐらいといったところでしょうか.金型の値段はちょっと分かりませんが…….金型・企画・開発(ハード・ソフト)を上乗せした原価でも高くて3000円ぐらいなのではないかと想像します.

2011年9月17日土曜日

社員が英語ができなかったらそれは会社の問題


英語研修は「自己啓発」扱いで(一定の会社補助があっても)自己負担,という会社は多いと思う.英会話学校と法人契約で社内開講という場合には,マンツーマンというわけにはいかないためレベル別クラスのグループ研修となり,低いクラスは(主に費用対効果の面から)開講されない,というのもよくある話だろう(想像で書いてます).そこのところは自己学習で,ある程度のレベルまで引っ張り上げてください,という態だ.
だいたいその開講されないラインはTOEIC 500ぐらいではないかと思う.

しかし英語ができない人が,「自己学習」と放置されて学ぶモチベーションを維持し,そこのラインまで持ってくることができるだろうか.語学はできるようになってこそ,はじめて読めて/聞けて面白いな,と感じるのであって,それ以下のちんぷんかんぷん状態では,できないことのネガティブな感覚が先行してモチベーションなど湧かないと思う.

一方で法人において,とくに総合職が英語ができないというのは,個人の資質云々以上に,組織としての大きな損失だ.社員のほとんどが日本で働いて日本にモノを売っている会社でも,取引先は外国で英語のメールを読み書きしなければいけなかったり,部品メーカーのドキュメントは(日本メーカーの部品でも)英語だったり,外国の規格を満たすために英語の文章を作成しなければいけなかったりと,本業の強みを活かす際に英語が足枷になっているようでは困る.地方の小さなオンリーワンメーカー(で上場企業)で,納入先は中国,東南アジア,ヨーロッパという会社は,この田舎でもいくつか挙げられる.
実際に社内で英語がネックになっている人も複数知っている.そしてそういう人でモチベーションをキチッと保って英語を勉強し,効果を上げているという人は見たことがない.僕の見聞範囲が狭いだけであることを祈る.

であれば,そのレベルの人たちには会社が全額負担で外部ででも英語研修を受講させるとか,その時間は残業時間扱いにするとか,などのインセンティブをつけて,底上げを図る必要があるのではなかろうか.でないと,いつまでも「忙しい」(―そう,そういう人たちはたいてい「忙しい」―)を理由に英語ができない人が昇格せずに滞留し続けるだろう.それは本人にとっても会社にとっても損失だ.

あるいは会社がそこに投資ができなければ,採用条件にTOEICを義務づけて,例えば600以下ははっきりと足切りとすればいい.HSBCの850,SAMSUNGの900とは言わないから.幸い不況で買い手市場なので,それでも優秀な人材は集まるはずだ.明示することで読むべき応募書類も減るだろう.

社員が英語ができなかったら,それは人事政策の問題なんである.